小さなアパートの一室に、一匹の猫と一匹の犬が暮らしていました。
猫は窓辺に座るのが好きで、犬は玄関で待つのが好きでした。
ある日、飼い主さんが急なお仕事で、いつもより遅く帰ることになりました。
犬はそわそわと玄関の前を行ったり来たり。
「まだかな、まだかな」
そんな犬の様子を見て、猫が静かに声をかけました。
「あなたは見張り役、私は見守り役。役割分担しましょう」
犬が「?」と首をかしげると、猫は窓辺にちょこんと座り、こう続けました。
「あなたは玄関で帰りを待つ。私はここから、空が暗くなっていく様子を見ている。だから大丈夫、ちゃんと夜になっても、ちゃんと帰ってくるから」
犬は少し落ち着いて、玄関の前にちょこんと座りました。
時間が経って、外がすっかり暗くなった頃――
「カチャッ」
ドアの音がしました。
「ただいま」
犬は飛び跳ねて、しっぽをぶんぶん振りました。猫は窓辺からゆっくり振り返って、小さく「ニャア」と一声。
飼い主さんは、二匹の出迎えに、疲れも忘れて笑顔になりました。
「ふたりとも、待っててくれたんだね。ありがとう」
犬と猫は、それぞれのやり方で、ちゃんと「待つ」ということをしていたのです。

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